書評

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石井妙子『女帝 小池百合子』(文藝春秋、2020)

小池百合子という人間の生き方を知ることができた。 有権者が政治家に求める基本的期待の一つに、その人が世の為、人の為という利他心に基づいて働いてくれるかどうかがあるのは間違いない。そんな世人の期待を欺き、この人は常に自分が一番でありたいという...
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壺井栄『二十四の瞳』(岩波文庫、2018)

古いものであるが、小学校の先生を目指す女性にお勧めの本である。戦前、戦中における地方ののどかな情景を想起させる、いい物語だ。 自分も小学校3年生のとき、大卒したばかりの新任女性先生が担任となった。級友と連れ立って、その先生の家に行ったことを...
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百田尚樹『今こそ、韓国に謝ろう そして、「さらば」と言おう』(飛鳥新社、2019年)

韓国の文化、社会、流行、グルメなどを一纏めにして称される「Kカルチャー」が一部の若い女性の間で人気である。実際に、わが家の娘もこの1年ぐらいの間に、YouTubeで自ら学んだというハングル文字で、自分の名前を書いたものを見せてきて、驚いたこ...
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高田純『21世紀 人類は核を制す─核放射線の光と影を追い続けた物理学者の論文集─生命論、文明論、防護論』(医療科学社、2013年)

専門部分が多くて飛ばし読みした箇所もある。 中国と北朝鮮が核爆弾により日本を標的に捉えることができる今、その脅威から日本がどのように国防を再構築すべきかを説いた箇所はよかった。チェルノブイリの事故に比べれば、福島原発の事故はあまり大したこと...
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春江一也『プラハの春』(集英社文庫、2000年)

チェコスロバキアについては、ほとんど知らない国だったが、この本を読み終えて、この国のことをよく知ることができるようになった。チェコスロバキアがワルシャワ条約機構という同じ同盟組織のソ連に軍事侵攻された史実に接し、ソ連という国家の本質の一面、...
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乃南アサ『結婚詐欺師』(新潮文庫、2004年)

結婚詐欺という言葉自体は見聞きしたことがあっても、具体的なことまでは知らなかった。この詐欺に遭ったことを悲嘆して自殺までする人が確かに存在し得る状況は、社会的損失の一つである。 自分自身には縁遠い世界の話しだった、これから結婚する予定のある...
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山崎豊子『不毛地帯』(新潮文庫、2009年)

ページ数合計約3,000ページの一大巨編、読むのに約1カ月半かかった。主に行き帰りの通勤電車で読んだ。電車の中が読む映画館のようだった。古くからある有名な本であることは知っていたが、タイトルからして暗いイメージを抱かせるので、とっつきにくい...
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池井戸潤『七つの会議』(集英社文庫、2016年)

八角民夫の言った次の言葉は真実だろう。 会社なんてどこも同じだ。期待すれば裏切られる。その代わり、期待しなければ裏切られることもない。 池井戸作品として最初に読んだ『空飛ぶタイヤ』があまりに面白過ぎたので、同じ作家の小説としてこちらも期待し...
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岡部伸『第二次大戦、諜報戦秘史』(PHP新書、2021年)

佐藤優さんが週刊誌で紹介していた内容に興味が湧き読みました。イギリスの公文書館に保存されている歴史的文書をもとに、よく調べられています。書かれていることは、もっともっと、日本国民に知られるべきです。 特に第5章(「ヤルタ密約」をつかんだ日本...
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鈴木大介『最貧困女子 』(幻冬舎新書、2014年)

可視化されていないセックスワーカーの現実を知ることになります。本書は、最貧困女子に共通しているのは、3つの障害と3つの無縁と説いています。3つの障害とは、精神障害、発達障害、知的障害。3つの無縁とは、家族の無縁、地域の無縁、制度の無縁です。...