本多静六『私の財産告白』(実業之日本社、2013年)

書評

リべ大の両学長が紹介していた本です。よかったです。

江戸時代から昭和時代にかけて著者のような逸材が存在していたことは、もっと多く知られてもよいのではないかと思いました。前半はまさにタイトルどおり蓄財の方法、後半は処世術のようなことを述べており、いずれも参考となります。

蓄財の基本は、毎月の収入の一定比率を確実に積み立てていくことと述べています。著者はその一定比率を月給の4分の1としており、この点は「バビロンの大富豪」が10分の1と説いていることから比較すると、かなり厳しいです。著者は、積み立てた資金を株式投資にも回し、これが大きく財産拡大に貢献したことを明らかにしています。時代は戦中、戦後で、日本経済が大きく復興を遂げる時宜にちょうどかなっていたことが幸運だったのです。

以下は、読みながらメモしたことです。

著者は、確たる人生目標を定め、次のようなことを実践しています。この設定の大事なことが伝わってきます。
・毎日、1ページ以上の文章執筆をする。
・40歳で貯金の利息を本俸以上にする。
・洋行を重ね、自らの足跡を6大洲に印す。
・370冊余りの書籍を著す。
・25歳で東大の助教授になる。
・日比谷公園の設計や明治神宮の造林など植林、造園関係で大きな偉業を残す。

p.26「一度は必ず貧乏を体験すべきものである。」
これには同感です。一人暮らしの大学生時代、白米に胡麻塩振りかけだけという食生活があったことを覚えています。

p.31「財産を作る問題の次は、財産を処分する問題と考え始めた。」
森博嗣さんの『お金の減らし方』と同じ考えです。一定程度のお金持ちになると、このような心境になってくるのだろうと思いました。

p.41「私のアルバイトは、「一日に一頁」の文章執筆の「行」によって始められた。」
これも上記の森博嗣さんの『お金の減らし方』で述べているように、アルバイト稼ぎ名目で小説を書いていたのと通じます。創作したものをアウトプットすることにより稼いでいくことが大切であることが分かります。

p.45著者の勧める株式投資法は次のとおり。
・2割利食い、10割益半分手放し。
・好景気時代には勤倹貯蓄を、不景気時代には思い切った投資を、時機を逸せずに巧みに繰り返す。

p.57「(子供への)相当な財産の分与などは全く顧慮する必要がなく、それはかえって子孫を不幸に陥れるものだと漸次気付くに至った。」
相続は残さないのが一番であるとよく言われていることと同じでしょう。しかし、自分自身はこの心境に至っておらず、援助はしてやりたい気持ちはあります。それは、自分の親からそのようにされて、とても助かったからです。

p.64「上野広小路の梅月」
著者の通っていた店。グーグルの口コミで高評価が並んでいる。いつか、行ってみたい。

p.189「仕事に追われないで、仕事を追う」ことである。つまり天才が一時間かかってやるところを、二時間やって追いつき、三時間やって追い越すことである。今日の仕事を今日片付けるのはもちろん、明日の仕事を今日片付けるのはもちろん、明日の仕事を今日に、明後日の仕事を明日に、さらに進んでは今日にも引き付けることである。」
ごもっともであり、何も言えません。

p.198「阿呆の頂上議員と為す。」
議員になるものは馬鹿だと、どこかで聞いた覚えがありましたが、慶應義塾の創始者、福澤諭吉が言っていたことだそうです。

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