ヘンリー・S・ストークス『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』(祥伝社、2013)

書評

私の読書日記から。10年前に発行された本である。著者自身は今年4月に亡くなっている。その息子、ハリー杉山はNHKのランスマでレギュラー出演し、サブスリーを目指して活躍中である。

この本は、タイトルだけからは直接に想像できない、三島由紀夫や橋本徹(元大阪市長)の話しが登場して、「なぜ」と感じた部分があった。読み進むうちに、著者は、三島由紀夫にかなり影響を受けたようであり、第3章では「三島由紀夫が死を賭して問うたもの」と題して特集している。三島由紀夫について細かく書かれている中で、彼が民兵組織である「楯の会」を主宰していたことは、この本を読んで初めて知った。また、三島由紀夫が日本国憲法の改正の必要性を訴えていたことも、この本を読んで初めて知った。

本のタイトルにある連合国戦勝史観がどんなものであるのかに興味を惹かれて手に取ったものであったが、読後は、三島由紀夫がどんな人物であったのかの方をより多く知ることができ、ためになった。

【本文記述メモ】
・p.5「声を大にして言いたいのは、「南京」にせよ、「靖国参拝問題」にせよ、現在懸案になっている問題のほとんどは、日本人の側から中国や韓国に嗾けて、問題にしてもらったのが事実だということだ。」
 →WGIPの思想の蔓延の結果だろう。

・p.46「アーネスト・サトウの伝記」
 →『一外交官の見た明治維新』を指す。アマゾンでの評価が高く、読んでみたい。

・p.75「ウェップ裁判長はオーストラリアへ戻って隠居した後に、『あの裁判は間違っていた』と、語っている。」
 →覆りはしなかったのが現実である。

・p.100北村稔『「南京事件」の探求』
 →読んでみたい。

・p.105東中野修道『南京事件 国民党極秘文書から読み解く』
 →読んでみたい。

・p.126「敗戦の時の国家元首であったにもかかわらず、昭和天皇は敗戦後も国民の尊敬を保ち続けた。世界史の奇跡といってよい。」
 →日本国の独自性であろう。政府や軍部に責任を押し付ける形で処理された。

・p.194インドネシアの9月30日事件
 →1960年代、中国が当時のスカルノ大統領が統治するインドネシアを共産化しようとしていた事実を初めて知った。それを阻止したのがスカルノ大統領であったということである。

・p.232「日本はこれほど古い歴史と、独自の精神を持っていたはずなのに、アメリカによってすっかり骨抜きにされてしまった。」
 →これはまさにそのとおりであろう。WGIPのたまものである。

・p.237「マッカーサーは朝鮮戦争を戦って、初めて日本が自衛戦争を戦ったことに、気づかされた。日本の主張が正しいことがわかった。」
 →東京裁判の裁判長、ウェップが隠居後に語っていたことと通底する。

・p.238「日本国憲法は、日本を弱体化し、二度と戦争を起こすことができない九人する降伏条約だ。憲法の前文は日本を絶対に再びアメリカに対して戦えない国として、誓約させた意図が、ありありだ。」
 →指摘のとおりである。

・p.239「三島が市ヶ谷で生命を賭して訴えたことは、『日本が魂を捨てて、アメリカの傭兵であり続けてしまったら、日本でなくなってしまう。日本が占領下で強要された憲法を護っている限り、独立できない』ということだ。」
 →三島が太平洋戦争以前の本来の日本に戻すことを望んでいたことが分かる。憲法改正論者であったということだろう。自民党の党是には、憲法改正が含まれているが、これまでの自民党はどうであったか。中国の脅威の高まりとともに、その必要性が一部で認識されているが、党全体にその必要性を認識してほしい。自民党自身が一部で左傾化しているのが気になる。

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