山崎豊子『不毛地帯』(新潮文庫、2009年)

書評

ページ数合計約3,000ページの一大巨編、読むのに約1カ月半かかった。主に行き帰りの通勤電車で読んだ。電車の中が読む映画館のようだった。古くからある有名な本であることは知っていたが、タイトルからして暗いイメージを抱かせるので、とっつきにくい印象からずっと読まずにたた。結論、とてもいい本である。

山崎豊子は、後書きで、この小説を書くあたり、小説の中に出てくる土地のすべてに行ったと記しており、綿密な取材をもとに書き起こしたことが分かる。さすがに新聞記者上がりの作家である。

読者は、読み進むうちに、「不毛地帯」には白い不毛地帯と赤い不毛地帯があることを知る。白い不毛地帯では、ロシアがどんな国であるか、その国民性はどんなものか、よく分かるようになる。赤い不毛地帯では、まったく文化の異なるイスラム世界の状況を知ることになる。

第2巻に次の2つの文章がある。

日本が平和国家であり続けることは絶対の理想だ、だが、そのためにはどこからも手出しをさせないだけの強い防御力が必要で、日米安保条約が存在していても、恒久的なものではありえないし、第一、自分の国の独立は自分の力で守る義務がある…

イスラエルは、ただの一つの敗北も、許されない、なぜならば、もしアラブに、イスラエル恐るるに足らずという、自信を抱かせたら、それはそのまま、イスラエルの滅亡に、繋がるからです

いつまでも米国の属国でいるいことはできない。憲法を改正するか、または自主憲法を制定して、主権国家としての存立を確立すべきである。

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