飯塚訓『墜落遺体』(講談社、2001年)

書評

1985年の日航機123便の墜落事故で死亡した乗員・乗客の検死を担当した、元群馬県警職員による手記です。友人から名著だと紹介されて読みました。単行本発行が1998年なのでだいぶ古い本ですが、読み応えはあります。小田周二『524人の命乞い』を先に読んでいて、事故当日における群馬県警の不審な動静が気になっていたので、そのことを頭の片隅に置きながら読みました。

藤岡市民体育館での検死、身元確認が壮絶であったことが否応なく伝わってきます。警察官はもとより医師、看護師の一生懸命な検診により、遺族への遺体引渡しが行われたことが分かります。WOWOW製作の「沈まぬ太陽」でも藤岡市民体育館におけるその描写はありますが、遺体の生々しさは本書による文字情報を認識して脳内で処理されるときの方が迫ってくるものがあります。

読みながら気になったのは、高濱機長の遺体が遺族の承諾のもと、解剖されたと記されている部分です(第3章p.75)。別なページでは、「高濱機長の遺体の一部が発見されたのは8月29日だった。下顎部と歯牙数本だけである。」(第11章p.278)と記されています。医療において、解剖の対象が下顎部と歯牙数本だけでも、「解剖」と言えるのかどうかが気になりました。

「(遺体が)真っ黒に炭化して」(p.79)いたり、「これが人間かと思われる炭化遺体」(p.85)であったり、高濱機長の遺体がわずか下顎部と歯牙数本であったりした理由は、ガソリンとタールを混合させた火炎放射器により徹底的に焼き尽くされたからだとすれば、符合します。

日航機墜落事故の本当の原因は、国家機密として永遠に闇に葬られていくような気がします。

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