以前から読みたい本リストに入れていたのと、仕事でスウェーデンのことを調べる必要が生じたため、今回読んでみました。現にスウェーデンに住んでいる著者がこの本を通じて訴えたかったのは、日本でスウェーデンが理想の国と評されているが、決してそんなことはない、ということです。読後感は、スウェーデンは意外にも、歪な国である、というのが正直な感想です。以下は、私が興味深いと思ったことです。
- 考え方がこうも異なるのかという一例として取り上げられているのが企業活動における「効率化」についてです。著者曰く、日本でいう効率性がいいとは、早く、無駄なく、高品質という、どちらかというと客志向の捉え方とされています。一方、スウェーデンで言われている効率性がいいとは、どれだけコストを掛けずに済むかという企業側の都合による捉え方をしているとのこと。効率の基準自体が異なる、ということになります。
- 高福祉を謡うスウェーデンなので、失業率は高くないだろうと思っていましたが、何と、日本の倍以上の比率だそうです。実際に調べてみたら、1990年以降はずっとスウェーデンの方が失業率が高い状況です。顕著なのは、1993年で日本の失業率が2.5%だったのに対して、スウェーデンの失業率が11.15%です。日本の失業率が2桁台に達したことはないような気がします。
- スウェーデン国民自身がアパートを借りようとすると5年や6年を待つ必要があるのは普通だそうです。これは日本人の感覚からすると、まったく信じられません。対して、スウェーデンにやってきた外国からの留学生がアパートを借りようとするときは政府、自治体、大学当局の手配により困ることなく入居できるとのことです。これは著者によると、外国人に対してスウェーデンが困った国、ひどい国ではなく、いい国であると思ってもらうための施策だとそうです。
- 日本とスウェーデンを比較するために、OECDの各種統計が引用、紹介されています。目を引いたのは、日本の非肥満率が世界で第1位であるということ。スウェーデンは第6位。ちなみに、最下位は米国で、もっとも肥満率が高いということになります。自殺率については、日本が世界で第4位、スウェーデンは第11位。ちなみに、最も自殺率が高いのは韓国です(これは韓国の歴代大統領が物語っています。)。
- 2017年における拳銃事件についてスウェーデンと日本を比較すると、スウェーデンでは306件なのに対して、日本では22件。人口比で捉えると、スウェーデンの方が176倍も高いとのこと。たまたま、2023年7月26日のヤフーニュース(KOREA WAVE提供、米警備保安会社ADT調べ)によると、旅行するのに危険な国は危険度が高い順に、南ア(0.81)、米国(2.17)、スウェーデン(2.28)、フランス(2.40)、ジャマイカ(2.42)の順。安全な国は安全度が高い順に、日本(7.51)、スロバキア(7.46)、キプロス(7.39)、ノルウェー(7.25)、ポルトガル(7.11)の順。同じ北欧諸国同士なのに、スウェーデンとノルウェーが対比的になっているのは不思議です。著者が言うには、「治安のよいイメージのあるスウェーデンですが、日本とはくらべものにならないほど拳銃事件が多く、治安も日に日に悪くなっているものの、警察官不足で解決策を見いだせない状況に陥っている」そうです。治安が悪化している要素の一つに、移民が増えているという背景があるのはほぼ間違いありません。
- 世界のマクロセル基地局(携帯電話基地局)市場の主なシェアは、総務省調べによると、2021年でHuawei(34.0%)、Ericsson(25.0%)、Nokia(15.6%)、ZTE(13.0%)です。中国系が今後排除される方向からすると、北欧系のEricssonとNokiaの将来性はあるということになります。
- 本の中でたびたび登場するのがスウェーデンの富豪一族であるヴァレンベリ家の話し。スウェーデンの大企業は、このヴァレンベリ家の系譜に連なるそうです。
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