作者と同じ乳がんになった人にとっては、とても身近に感じられる内容だと思う。
私が読んで印象的だったのは、作者の描くバンクーバーの街についてである。バンクーバーの広い道路、クルマが必須の住環境、海が近いこと、病院職員を含めたそこに住む人々の描写がよく伝わってきた。
面白かったのは、第5章「日本、私の自由は」である。日本に久し振りに帰国して、東京という街の物理的な狭さと時間的な狭さ(せせこましさ)がバンクーバーとの対比で記述されており、面白かった。その延長線上に、狭い東京、ひいては狭い国土の日本ゆえに、日本人は狭い空間で助け合いながら生きなければいけないために、日本には情けが育まれる土壌があると結び付けている。対して、カナダ人は、尊厳から愛をもって人に接すると説いている。
次の文章(p.207)を読んで、カナダ人の生き方が参考になると思った。
「 優先座席で寝たふりをするビジネスマン、バスの中でベビーカーを蹴る人、近所の保育園に「うるさい」と書いた手紙を投函する高齢者、それらは全て、日本で起こった話だ。KAROUSHI という言葉が国際的に認知されるほどの労働時間、どれだけ働いても30年以上景気が回復しない国で、私たちはそれぞれのスペース、居場所を守るために、必死で生きている。他者のスペースを尊重出来なくなるほど、追い詰められているのだ。 何度も言うが、バンクーバーの人は自分の居場所を守ることを当然と考えているし、それが可能な環境にある。どれだけ忙しくても定時で帰る」
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