若月澪子『副業おじさん』(朝日新聞出版、2023年)

書評

紹介されていた書評で面白そうだったので、購入して読んでみた。内容は、副業しているおじさんへの取材や、自らの体当たり仕事体験をもとに書かれている本。自らの体当たり体験については、かつて読んだ、笹井 恵里子「潜入・ゴミ屋敷-孤立社会が生む新しい病」の著者も同じように自身の体当たり体験をもとに書き起こしていたので、通じるところがある。彼女たちの取材魂をまずは讃えたい。

プロローグに書いてある「組織を離れると、個人が想像以上に非力な存在である」ことは、まさにそのとおり。会社を辞めれば、ただの人になる。

第1章
「大手企業に長年務めた、環境の変化に弱いタイプのおじさんは、副業探しで苦戦しやすい。」
安定した職業に就いていた人がいきなり荒波の海に放り出されたようなものに例えられるかもしれない。チャールズ・ダーウィンが「種の起源」の中で書いたとおり、「最も強いものが生き残るのではない。最も変化に敏感なものが生き残る」。これは、動物のみならず、人間世界にも十分に通じる普遍的な真理である。

第4章
「長年勤めてきた会社に最適化され、外で戦える武器が何もないと不安を感じている中高年は多い。」
これまでの伝統的な日本企業における出世の一つの方法は、就職した会社の色にどっぷりと染まり、社内政治にも敏感に努めるということがあった。だから、外で戦える武器などないのである。今後は、このような伝統的価値観の転換を図っていかなければ、不条理が通る会社のままで、その会社自体の存在自体が危うくなる。

第6章
○何人ものおじさんを取材した結果として、著者がまとめた「おじさん度」の基準を判定するための説明がある。自らを振り返る機会になった。
○自衛隊で約31年勤務して退職した人の話しが登場する。その人は、51歳で退職して、退職金と若年定年退職給付金を合わせて約3,000万円が給付されたという。すごく恵まれている。
○中高年おじさんにセカンドステージの理想を尋ねて返ってきた回答の多くは、「わずらわしい人間関係を避けたい」と「ありがとうと言われたい」とのこと。これも同感して納得する返答である。

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