石原慎太郎『天才』(幻冬舎、2018年)(文庫版)

書評

日本の高度経済成長を主導した人物の一人、戦後政治を代表する人物の一人であることは、間違いない。大袈裟かもしれないが、ある意味で、この天才がいなかったら、今の日本はなかったであろうとさえ、思った。
ロッキード事件でアメリカに嵌められたのは、中国との出過ぎた国交回復劇がその反感を買ったからなのだろうか。ここら辺は、他の文献で今後読んでいきたい。日本がアメリカの属国ではなく、真の独立国となるためには何よりも政治がしっかりしなければいけないのだが、現下の足許を見る限りその期待は持てそうにない。
著者に関する解説で、著者が日本で最長の滑走路を有する横田基地について、民生共用を考えていたことが記されており、初めて知った。実現すれば、相当な利便がある。

以下は、記録しておきたい本文からの引用。

  • p.11「これからの人生のために体得したことは、何事にも事前のしかけというか根回しのようなものが必要ということだった。」
  • p.47「政治家には先の見通し、先見性こそが何よりも大切なので、未開の土地、あるいは傾きかけている業界、企業に目をつけ、その将来の可能性を見越して政治の力でそこに梃入れし、それを再生させるという仕事こそ政治の本分なのだ。」
  • p.48「政治家は物事の先をいち早く読まなければならない。周りがまだ気付かぬことの可能性をいち早く予知して先手を打ってこそ、後でどう謗られようとそれこそが俺を選んでくれた人たとの負託に応えられるのだと確信したのだ。」
  • p.137「俺は彼等に嫌われたのだ。いみじくもキャシンジャーがいったデンジャラス・ジャップからアメリカの利益を守るため、誰かにいわせればアメリカという虎の尾を踏みつけた俺を除くために、事を巧みに広く手を回してロッキード・スキャンダルという劇を展開させたのだろう。(中略)無念ながらこの国は未だにアメリカの属国ということをなんとこの俺自身が証してしまったのかもしれない。」

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