白井聡『主権者のいない国』(講談社、2021年)

書評

タイトルに引かれたのと、Amazonでのグローバル評価から興味が湧き、購入して読んでみた。結果はイマイチ。書き下ろしではなく、各種雑誌や地方新聞で初出のものを事後的に一冊の書籍にまとめたものとして作られているので、各章で同じ話しが複数回登場する。また、著者の性格なのか、同じ章の中でも同じ話しが重複して登場する。書いてある内容自体は難しい箇所もあり、途中何回か挫折しそうになったが、何とか読み進むことができ、新たな知識もあった。

全体に通底しているのは、安倍元首相批判である。著者が書いているような見方や考え方をする人がいるということも知っておく必要があると思う。

第三章第二節で、「原爆投下の最大の動機がソ連に対する牽制であったことは大方証明された」とある。これは初めて知ったことだった。

第三章第六節で、自著「国体論 菊と星条旗 」のことが頻回に登場する。戦後日本のアメリカの属国化が天皇制を通じて行われ、アメリカが事実上の天皇の役割を果たすようになった、ということを自著に触れて言いたいことなのだろう。天皇制を利用して米国の属国化が図られたとする主張について、著者の考えを論理的に説明するのは難しいが、直感的には理解でき同意できる。

第四章第一節で、現在の憲法は、天皇を元首とし、昭和天皇に戦争責任を負わせない代わりに、戦争放棄が盛り込まれたということを理解することができた。

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