渡辺京二『逝きし世の面影』(平凡社、2005)

書評

名著である。他人に自信を持ってお勧めできる本。著者は、年末に亡くなった渡辺京二さん。一時期、共産党に属したこともある方だが、その後離党している。

ここ4、5年、日本凄いねというYouTubeやテレビ番組が多いが、その原点に相当するものかもしれない。どちらかというと、興味を駆り立てるのが主眼のそれらと本書が一線を画すのは、近代における「簡素と豊かさ」「親和と礼節」など、古き佳き日本の生来的伝統に基づくものを主として取り上げていることである。世界のグローバル化による国々の往来の頻繁化により、一国の独自性や文化がだんだん消失してきているのは残念である。

第10章「子どもの楽園」は特に面白い。児童虐待が現代日本の問題となっているが、明治の世の時代の人々がいかない子どもを可愛がっていたかについて、外国人(異邦人)の目を通して語らせている。イスラエル流にいえば、子供は国力の源泉である。大事にしていきたい。

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