池井戸潤『花咲舞が黙っていない』(中央公論新社、2017年)

書評

2024年13冊目。

購読している新聞で連載されていたことはなんとなく知っていたが、朝の忙しい時間は見出しだけで済ませることも多く、連載当時は読まなかった。

先週からテレビ放映されることを知り、通しで読んでみた。なかなか面白かった。題材は、高杉良「金融腐蝕列島」と同じと思われるところもあった。時代設定は、金融機関の破綻が相次いだ1990年代後半から2000年に入りたての頃である。

昨年亡くなった國重惇史氏の著書『住友銀行秘史』の結末で、「出世をしたいなら、減点主義の組織なのだから、何もしないことだ。」のような趣旨のことが書かれてあったのを覚えている。そうはいっても、人間世界なので、上に気に入られなければ出世はできない。今の銀行は昔と変わったのだろうか。

この小説の中で、登場人物の相馬が心中、次のようにつぶやいている。「日々苦労し、周りの人間関係に腐心しながら、何とかバランスを取って戦っているのが銀行員であり、ひいてはサラリーマンというものではないのか。」とても共感し、ホッとする一文である。

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