森博嗣『お金の減らし方』(SB新書、2020年)

書評

リべ大の両学長が紹介していた本。読後感の第一は、この著者のような性質の人は、決して多くはないであろうということ。珍しい方であり、不思議な方である。理系の学者にして文系小説家、印税で20億円を超える収入があるといい、お金を欲しいと思うことなくじゃぶじゃぶ入ってくる方である。

もっとも、著者が言うには、自分が価値を見出す目的や目標を成し遂げるために、または、それらを欲しいと思ってお金が必要なのであり、お金自体を最終目的としていない。ここが大事なところだろう。淡々と素直に自分の思いを書いていている。

ときに抽象的な表現ぶりがあり、何を言っているのか分らなくなる箇所があった。

以下、本文記述とそれに対するコメント。
・「1日1時間以内の範囲で、執筆を続け」
 ⇒時間を区切って定期的に続けることが肝要であることを言っている。

・「お金持ちの人は例外なく、お金に対して細かい。」
 ⇒よく観察している。ただ、例えば資産家のような大金持ちは、気前よくあまり細かではないようにも思う。

・「仕事というのは、「嫌な思い」と「お金」を交換する行為」
 ⇒会社員の世界では、まさにこのとおりである。

・「目的のために戦略を立てて実行する」
 ⇒著者の場合は、広い土地で自分が作る機関車を走らせたいという目的のために、小説を書くバイトをしたということになる。今流に言えば、趣味のための副業と言えるだろう。

・「自分が買ったものに対して、「あれを買ったのは失敗だった」という後悔をしたことがない。」
 ⇒自分はこれまで、服とかで合わなかったりすると後悔したことがある。

・「人に評価されないと価値がないという思い込みは間違っている。」
 ⇒人間関係の中に生きていると、どうしてもこのような感覚になりがちである。作者のように、一人で比較的自由に仕事のできる、一歩引けた立場から発せられる言葉であろう。

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