読んだ結論は、プーチンが日本に北方領土を返還する意思はまったくない、ということ。
返還されるチャンスだったのが、ソ連が崩壊してエリツィンが大統領のときで経済的にも国力がもっとも弱まっていた1992年頃であった。
1951年のサンフランシスコ講和条約で日本は千島列島を放棄した。この放棄した千島列島には、国後島と択捉島が含まれるというのが当時の日本政府の公式見解だった。逆に言えば、千島列島に含まれるとした国後島と択捉島は放棄しても、色丹島と歯舞諸島は放棄しなかった、ということである。
その後、1956年の日ソ共同宣言で、平和条約締結後に色丹島と歯舞諸島を日本に引き渡すことが明記された。この点で、1951年のサンフランシスコ講和条約と1956年の日ソ共同宣言は整合している。
鈴木宗男議員や安倍元総理が考えていたとされる二島返還先行論は、1951年のサンフランシスコ講和条約や1956年の日ソ共同宣言に基づくまっとうな対応だったと言える。
そもそも容認できないのは、1945年当時に有効だった日ソ中立条約を一方的に破棄して北方領土に侵攻してきたソ連の行動であるが、その後に日本は1951年のサンフランシスコ講和条約、1956年の日ソ共同宣言を交わしてきたのだから、国後島や択捉島まで含めて四島返還とするのは難しいのではなかろうか。
しかし、千島列島をソ連に引き渡すとされたヤルタ密約に日本は拘束される筋合いがないばかりか、当事国が関与していない一方的領土移転は国際法上の原則にも反していることをしっかりと認識したうえ、ソ連が日ソ中立条約を反故にして不法侵入、不法領土占拠している事実だけは今後の日本人の常識であり続けたい。
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