若い頃は歴史モノにまったく興味がありませんでしたが、齢を重ねてきたことの裏返しか、最近はその歴史モノが面白いと思えるようになってきました。昭和のゾルゲ事件について詳しく知りたかったので読みました。
戦中の時代、ドイツの新聞記者を名乗りながら日本でスパイ活動し、旧ソ連に当時の日本の戦略情報を流していたゾルゲ。そのゾルゲに密通していたのが、近衛文麿政権のブレーンで、軍部とも独自の関係を持っていた朝日新聞社記者の尾崎秀実。ゾルゲは、日本が北進することなく南進する決定をしたことの情報を尾崎から入手してスターリンに報告。
スターリンはその情報に基づき、シベリアに展開していた軍隊を、ドイツからの侵攻で弱りかけていた首都モスクワに引き上げさせ交戦、戦勢を逆転させて防衛に成功しました。当時の日本が北進はせず、ソ連と交戦しない方針であることの情報がゾルゲに伝わっていなかったら、第二次世界大戦の様相は実際と異なっていたかもしれません。
本書で取り上げられているゾルゲ、ラストポロフ、レフチェンコはいずれも旧ソ連のスパイ、今もロシアは日本にスパイを送り込んでいることは想像に難くありません。スパイ防止法の成立が望まれている理由が分かりました。 瀬島龍三がソ連のスパイだったらしいことは、今年始めに長編の『不毛地帯』を読んで感銘を受けていただけに、少しショックに感じています。
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