中島健祐『デンマークのスマートシティ データを活用した人間中心の都市づくり』(学芸出版社、2019年)

書評

仕事上の必要から、デンマークを知るために読みました。人口は600万人未満、面積は日本の九州程度の国です。幸福度の高い国として知られています。現在の首相は40代半ばの女性。

以下は、本書で取り上げられていることの引用とこれに対する私の感想、およびメモです。

労働環境については、日本と異なり、欧米流の合理性が通底しています。どういうことかというと、著者によると、「労働時間で縛られることがない代わりに、デンマークでは仕事のパフォーマンスは厳しく問われる。与えられた目標を達成することは当たり前で、職種によってはそこに付加価値と革新性が加えられているかが評価のポイントになる。パフォーマンスが低い者はすぐに解雇されることもある。」とのこと。実際、日本の労働法制は労働時間を観点にした規定が多くあるのに対して、成果に言及した規定はあまりないように感じています。このような土壌だと、旧態依然とした赤字体質のゾンビ企業がいつまでも存続することの要因になります。この点は、デンマークに学ぶところを多とすべきだと思います(デンマークで仕事のパフォーマンスが低くて解雇された場合の保障については、長くなるので本書記述に譲ります。)。

日本では、北欧に対するイメージとして、一般的に男女平等社会と捉えられています。著者は、男女平等の結果として男女格差がないことによる歪み、むしろ女性が強過ぎると思われる面を紹介していて、これが面白いです。著者のデンマーク人の友人は、4回の結婚と離婚を繰り返しいるそうです。結婚のたびに子供たちが生まれ、離婚のたびに子供を引き取ってきた結果、8人の子供を育てているとのこと。当人は、「女性の方が強いから仕方がないね。」と大きな不満ではないようです。

また、「結婚に至るパターンは、女性が男性をつかまえて、まず同棲しお互い相性が良いと結婚するが、離婚する場合は女性が男性を捨てることが多い。」そう。日本とはまったく反対の状況です。戸籍制度のようなものがあるのかどうか分かりませんが、そんなに結婚と離婚を繰り返していたら、戸籍はとても複雑になっていくでしょう。また、相続の仕方もとても複雑になるでしょう。もし、相続法のような法律があったとしたら、日本のそれとはだいぶ異質なものにならざるを得ないような気がします。

デンマークに本社を置いて、世界にもその名を知られている企業が紹介されています。私自身は知らなかった企業もあり、一投資家の立場からこのブログにメモしておきます。

○カールスバーグ
 もちろん、ブランドは知っていましたが、このブランドがデンマークに本社を置く会社だとは知りませんでした。コペンハーゲン市場に上場され、「気候変動対策優良企業」に認定されています。8月31日現在の株価は、1,013デンマーククローネ(21547.44円)。配当利回り非表示のため、無配企業だと思われます。

○アーステッド
 世界最大の洋上風力発電企業で、株式の過半数をデンマーク政府が保有しています。日本にも事務所があります。8月31日現在の株価は、439.20デンマーククローネ(9340.06円)。この会社も「気候変動対策優良企業」に認定されています。配当利回り非表示のため、無配企業だと思われます。

○ノボルノディスク
 糖尿病治療薬のリーディングカンパニー。株価は現在、チャート上は右肩上がり状態。8月31日の株価は、1,280.80デンマーククローネ(27243.79円)。配当利回り非表示のため、無配企業だと思われます。

本書の内容には取り上げられていませんが、グリーンランドがデンマークの一部であることを初めて知りました。かつてはデンマークの植民地だったそうです。トランプ前米国大統領がデンマーク首相にグリーンランド購入を申し出たことがあったそうですが、地球儀を見ればこの発言の意図は納得できます。

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