面白かった。インドネシアという国の戦後の歴史を知りたい人にとってはとてもいい教材となる。
何かの本を読んでいるときにこの回想録のことが述べられていて、そのときにアマゾンでちらっと調べて高評価となっていたので、ずっと気になっていた本であった。出版社もしっかりした会社だったので、内容や品質も一定担保されていると考えていたし、実際に読んでそのとおりであった。
さて、現在83歳になるデヴィ夫人、この本を読むと壮絶な人生であったことが分かる。デヴィ夫人のことをあまり知らなかった頃、その日本人離れした顔立ちから、日本人ではないと勝手に思い込んでいたのだが、東京都港区生まれのれっきとした日本人であった。
本文中、「絶対ああいう白人たちを跪かせてやるんだと心に誓った。」(p.20)とか、「お母さんを早く楽にさせてあげようといつしか心に堅く決めていた。」(p.24)とか、「20歳までにはこうなりたいというプランを思い描いて」(p.26)とか、「自分でオーナーになりたかった。」(p.38)とか、強い希望を常に思い描いているところが素晴らしい。そして、それらを実現するために努力を厭わないでいる。
スカルノ大統領との結婚は、デヴィ夫人自らがこの本の中で述べているように、「じつはあらかじめアレンジされたものであったかもしれない。」(p.44)。これが仮に本当だとしたら、スカルノ大統領にとびっきりの日本人美女をいわば人身御供として献身することにより、当時、日本とインドネシアで行われていた戦争賠償の交渉を少しでも円滑にしようと仕組まれた国策結婚ではなかったのかという見方もできるかもしれない。
イスラム教では、夫は妻を4人まで持つことが許されており、後から妻となる女性は自分より先に結婚している妻たちの同意を得なければならないという(p.68)。このような宗教的教義があることを初めて知ったのだが、男女平等を訴える世界の人権者団体は、このようなイスラム教の教義をどのように捉えているのだろうかと、読みながら考えた。宗教は特別だからと許容しているのか、それともフェミニズムの世界的潮流からそのあり方に疑問を呈しようとしているのか、どちらなのだろう。
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