ハワード・マークス(貫井 佳子 訳)『投資で一番大切な20の教え』(日本経済新聞社、2012年)

書評

2012年の発行以来、20刷りの人気本です。バフェットが推薦している本だからということもあるでしょう。

日本語的な別なタイトルを付けるとすれば、「株式投資の心得読本」となりましょうか。少し古臭い表現かもしれませんが、わたくし的にはこれがピッタリします。株式投資におけるリスクのこと、このリスクへの対処の仕方が説明されています。

バリュー投資とは、投資しようとする株式の本質的価値を算出し、その株価よりも割安なら買う、ということだと理解します。ここで言われている本質的価値とは、理論株価と同義でいいのかどうか、本筋から離れますが、気になりました。

書いてある内容が頭にすんなり入ってきませんでした。もちろん、個別の部分で断片的に書いてあることは理解できないわけではありませんが、章ごとのタイトルに応じたストーリー感はあまり抱けませんでした。読みにくさの原因の一つには、英語で書かれている原著が言語体系の異なる日本語訳に訳されていることがあることは確かでしょう。特に、原著者が分かりやすいつもりで比喩を用いても、それが日本語訳されると、日本人の思考には合わないということはよくあることだと思います。

2007年から2008年の金融危機が起きた当時のことが頻回に回想して書かれています。それだけ、大きな出来事だったことの裏返しです。当時、自分は1990年代からの塩漬け国内株式1銘柄をほったらかしにしていたぐらいでしたので、損失の痛みを感じることもなく、過ごしていました。

以下は、本書に書いてあって大事だと思った箇所の記録です。
・「『高い』、『安い』という言葉については、何らかの客観的な基準が必要であり、最も実用的な基準はその資産の本質的価値と言える。そうすると、この原則の意味は明確になる。『本質的価値を下回る価格で買い、上回る価格で売れ』だ。」(p.40)
・「バリュー投資は本質的価値を正確に推計することにかかっている。」(p.49)
・「バリュー投資家が最大限望めるのは、資産の本質的価値を正しく見積もり、価格がそれを下回ったときに買うことだ。」(p.49)
・「バリュー投資家が最も高い利益をあげるのは、割安な資産を買い、まめにナンピン買いをしているうちに、価格が分析どおりに上昇した場合である。したがって、下げ相場で利益をあげるのに不可欠な条件は二つある。一つ目は、本質的価値に関する見解を持っていること。二つ目は、その見解を我慢強く持ち続け、たとえ値下がりのせいで自分がまちがっているような気にさせられても、買うことだ。最後にもう一つ忘れてはならないのは、その見解が正しくなければならないという点である。」(p.52)
・「投資は一種の人気投票であり、最も危険なのは人気の絶頂にある資産を買うことだ。ピーク時にはあらゆる好材料や好意的な見解が価格に織り込み済みであり、それ以上新しい買い手は現れない。最も安全で、最も高い収益性が見込まれる投資をするには、誰も欲しがらないものを買えばよい。時間とともにその資産の人気や価格が変わるとしても、上方にしか行かないからだ。」(p.58)
・「すべてが順調で価格が高騰しているとき、投資家は慎重さを忘れ去り、買いに殺到する。その後、市場が混乱に陥ると資産はバーゲン品となり、投資家はリスクをとる意欲を失って、売りに殺到する。この繰り返しが永遠に続くのだ。」(p.136)
・「『他人が慎重さを欠いているときほど、自分たちは慎重に事を運ばなければならない』。よく引用されるウォーレン・バフェットの忠言の核にあるのはこの考えだ。バフェットは周りのみんなと反対の動きをすること、つまり逆張りを勧めているのである。」(p.162)

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