ビジネスパーソンにとって読む価値があると言われてきた本です。30年近くも前の発行物なので、ビジョナリー・カンパニーとして取り上げられる企業として今を華やぐGAFAMの登場はあるはずもありません。読後に気になったのは、GAFAMにはビジョナリー・カンパニーに普遍的に認められる基本理念があるのだろうかどうか、ということです(なくても、それは現代流のありかたなので問題ありません)。
私がこの本に強く感じた著者の主張は次のとおりです。
・指導者よりも、仕組み作りや組織作りがピジョナリー・カンパニーには重要である。
・ビジョナリー・カンパニーには、「基本理念」がある。
これは、「経営哲学」に近いモノともいえます。日本企業的にいえば、「社訓」が近いです。日本で有名な尺には、近江商人の「三方よし」があります。
・利益至上主義は良くない。利益はあとからついてくるものである。
これは、最近のビッグモーター事件から明らかです。逆説的ですが、永続しない企業は利益至上主義になる、という裏返しになります。
・進歩を促す強力な仕組みとして、BHAG(Big Hairy Audacious Goals、ビーハグ)という、社運を賭すに比肩するほどの大胆な目標設定を掲げる必要がある。
これは、社長を筆頭に、組織に属する全員に浸透している必要があります。
また、感想としては以下を挙げます。
・「時を告げる」や「時計を造る」という表現は、本文を読んでいれば理解できますが、この言葉だけでは何を言おうとしているのか分かりません。ここら辺がいかにも英語らしい表現です。
・ビジョナリー・カンパニーとして挙げられているノードストリームがカルトのような文化を有する会社として描かれています。新卒採用者をその会社の文化に馴染むように培養し、転職者をほとんど、またはあまり採用せず、その文化に馴染まない者は出世できないという点で、伝統的な日本の会社と共通しているかもしれないと思いました。これは、第1章にある神話7「ピジョナリー・カンパニーは、だれにとってもすばらしい職場である」の反対です。すなわち、現実は、ピジョナリー・カンパニーの基本理念と高い要求にびったりと「合う」者にとってだけ、すばらしい職場である、ということです。
・第7章のタイトル「大量のものを試して、うまくいったものを、残す」、これは、リベ大の両学長が実践していることとほぼ同じくらい、会社成長に重要なことだと思います。
・第8章のタイトル「生え抜きの経営陣」、かつての伝統的な日本企業は生え抜きの経営陣で占められていたものですが、今や社外取締役制度の導入により経営陣が生え抜きで占められることは少なくなってきています。
以下で左側がビジョナリー・カンパニー、右側が比較対照企業を著しています。
スリーエム VS ノートン
アメリカン・エキスプレス VS ウェルズ・ファーゴ
ボーイング VS マクダネル・ダグラス
シティコープ VS チェース・マンハッタン
フォード VS GM
GE VS ウエスチングハウス
ヒューレッド・パッカード VS テキサス・インスツルメント
IBM VS バローズ
ジョンソン&ジョンソン VS ブリストル・マイヤーズ
マリオット VS ハワード・ジョンソン
メルク VS ファイザー
モトローラ VS ゼニス
ノードストローム VS メルビル
プロクター&ギャンブル VS コルゲート
フィリップ・モリス VS R・J・レイノルズ
ウォルマート VS ケンウッド
ウォルト・ディズニー VS エームズ
ソニー VS ケンウッド
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