エマニュエル・トッド(堀茂樹 訳)『問題は英国ではない、EUなのだ』(文藝春秋、2016年)

書評

タイトルに即した内容なのは、第1章の「なぜ英国はEU離脱を選んだのか?」のみ。第3章の「トッドの歴史の方法」は読んでいて眠くなる内容であった。

後半章の今日の世界情勢に関する時事論集のうち、日本に関する記述は日本人として考えておくべきことであり、歴史人口学者からの視座といえる。

著者は、日本人自身が日本という国を危険な国であると認識している人が多いことをとても不思議がっている。確かに日本の近現代史上、他国に侵略を図った事実はあったが、その時代は同じようにヨーロッパの国々も行っていたことであり、それが当時の帝国主義そのものだったのに、なぜ日本だけが自身をそんなに卑下しているのかと問う。これぞまさにWGIP(War Guilt Information Program)が知られていない証左である。

米国占領軍が日本人から占領政策に対する反感を買わないように仕組んだ政策は、現代を生きる外国人にはにわかには理解されないだろう。

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