この本のあとに発行された石平『中国共産党 暗黒の百年』(飛鳥新社、2021年)と重複する箇所もあるが、重層的に読むことで、現在の中国を支配する中国共産党の多面的な理解につながる。
石平氏の著書がタイトルどおりに批評的に書いているのに対して、楊氏の著書は職業柄、学際的である。本著により、共産党の長征の歴史をより多く知ることができた。
以下は、本文記述箇所からのメモ
p.21 「档案」という個人の政治的内申書が中国には存在するという。共産党書記が本人との面接をもとに作成、更新する。これは、いわば本人が閲覧できない本人のプロファイルのようなものだろう。日本の会社の人事部にも存在してきたような書類だろう。ちなみに、最近の日本の会社では、雇用の流動化によりその種のものはなくなりつつあるだろうが、一つの会社の終身雇用が完全に当てはまった昭和時代には高い確度で存在していたことであろう。
p.76 「戦後、毛沢東は田中角栄首相や、日本社会党の訪中団に対して、繰り返し『戦争のことを謝ることはない。おかげで私たちが政権を取れた。』と発言しています。」とある。これは記憶しておくべきことである。
p.184 中国が日本の首相による靖国神社参拝をなぜ批判するようになったのか、また毛沢東が日中戦争について日本は謝らなくてよいとなぜ言ったのか、いずれも中国の内政が絡んでいたことを明かしてくれている。
p.201 「2047年、香港が中国に完全併合され、政治体制が社会主義体制へと変更されることを、多くの香港の人たちは憂慮し、強く反発しているのです。」香港人の海外移住が進むことになりそうである。
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